カニバリゼーションとは?意味と具体例「飲食店で売上を伸ばす戦略的活用法」

「カニバリゼーション(Cannibalization)」という言葉を聞いたことがありますか?

ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、実は飲食店やカフェを経営している人にとっては、とても身近な問題なんです。

カニバリゼーションって何?

簡単に言うと、自社の商品やサービス同士が競合してしまい売上を食い合う現象のことを指します。

例えば、レストランが新しいメニューを追加したものの、もともと売れていた看板メニューの売上を奪ってしまい、全体の売上が伸びなかった… なんてこと、ありませんか?

これこそが「カニバリゼーション」の典型的な例です。

今回は、カニバリゼーションの具体例と飲食店がそれをどう活用するかについて詳しく解説していきます!

カニバリゼーションとは?意味をわかりやすく解説

カニバリゼーションは、業種を問わず発生しますが、特に飲食業界ではメニューの追加やブランド展開などで頻繁に起こります。

カニバリゼーションの具体例

例えば…

  • 人気メニューがあったのに、新メニューを追加→結果的に元の人気メニューの売上が落ちる
  • テイクアウトやデリバリーを導入したら、店内飲食の売上が減ってしまった
  • 新しいブランドを立ち上げたら、本店の客がそちらに流れてしまった

このように、せっかく新しい施策を導入したのに思ったように売上が伸びず、むしろトータルで見るとマイナスになってしまうことがカニバリゼーションの怖いところなんです。

でも、これは必ずしも悪いことではありません!

カニバリゼーションを上手くコントロールできれば、逆に売上を伸ばすことも可能なんです。

【事例】飲食店でよくあるカニバリゼーションの例

先ほどもお伝えしたとおり、カニバリゼーションは飲食業界でよくある問題ですが特に新メニューの追加、デリバリーの導入、サブブランドの展開などのタイミングで発生しがちです。

新しい施策を導入したはずなのに結果的に売上が思ったほど伸びず、むしろ既存の売上を奪ってしまった…

そんなケースを見ていきましょう。

メニューの追加で売上が分散してしまう

新メニューを導入すると、お客様にとって選択肢が増えて良いことのように思えます。しかし、既存の人気メニューと競合してしまうと、売上が分散し、結果的に全体の利益が落ちる可能性があります。

具体例:「和牛ハンバーグ」と「黒毛和牛のローストビーフ」

例えば、あるレストランでは「和牛ハンバーグ」が大人気でした。ところが、「お客様にもっと選択肢を!」と考え、新しく「黒毛和牛のローストビーフ」を導入。しかし…

✅ ハンバーグを食べていた常連客が、ローストビーフに流れた
✅ ローストビーフの仕入れコストが高く、利益率が悪かった
✅ 結局、売上は変わらず、利益率だけ下がった

これは典型的なカニバリゼーションのパターンです。

メニューを増やすことで新規客が増えるなら良いのですが、単純に客の選択肢を増やしただけでは売上が分散するだけで終わる可能性が高いのです。

テイクアウト・デリバリーが店内飲食を食ってしまう

最近、多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーを導入していますよね。特にコロナ禍以降は、テイクアウト需要が急増しました。でも、これがカニバリゼーションを引き起こす原因になることもあります。

具体例:カフェのデリバリー導入が逆効果に

あるカフェでは「もっと売上を伸ばそう!」とデリバリーを開始。

しかし…

✅ デリバリーの売上は増えたが、客単価が低い(セット注文が少ない)
✅ 常連客が「お店に行かなくてもいいや」となり、店内利用が減った
✅ 結果的に、高単価なイートイン客が減ってしまい、利益が落ちた

デリバリーは便利ですが、店内での体験価値が重要な飲食店では導入の仕方を間違えると売上が伸びるどころか利益が減ることもあるのです。

サブブランドの開業で顧客が流れてしまう

新しくブランドを作るのは、一見すると店舗の成長戦略として理にかなっているように見えます。しかし、ターゲットをしっかり分けないと、自社ブランド同士で競合し、売上を奪い合う結果になりがちです。

具体例:高級レストランがカジュアル業態を展開

ある高級レストランが、よりカジュアルな層を取り込もうと、「姉妹ブランド」としてリーズナブルな価格帯のレストランを開業。しかし…

✅ 本店の客が「こっちの方が安いし十分おいしい」と流れてしまった
✅ 新ブランドの利益率が低いため、結果的に全体の売上が減少
✅ ターゲットを明確にしなかったため、どちらのブランドも中途半端に

このように、ブランド展開は戦略を誤ると、ただのカニバリゼーションになってしまうのです。

カニバリゼーションをチャンスに変える方法

カニバリゼーションは一見すると「売上を奪い合う悪い現象」に見えますが、視点を変えればビジネスチャンスにもなり得ます。 

ここでは、常識にとらわれない柔軟な発想を取り入れ、カニバリゼーションをうまく活用する方法を解説します。

「顧客層」をズラす戦略

同じ商品やサービスでも、価格帯やターゲットを明確に分けることで売上の食い合いを防ぎながら市場を広げることができます。

カニバリゼーションが起こるのは「同じターゲットに、似たようなものを提供している」から。

だったら、ターゲットを変えてしまえばいいのです。

具体例:「ランチ限定のお得メニュー」で新規客を獲得

ある高級レストランでは、ディナーのみの営業で「特別な日の食事」として人気でした。

しかし、より多くの顧客を取り込むために「ランチ限定のお得メニュー」を導入

すると…

✅ ディナー客とは違う層(オフィスワーカーや主婦)がランチに来店
✅ 「ランチで試して、気に入ったから記念日にディナーを予約」という流れが生まれる
✅ 結果的に、新規顧客の獲得と利益アップにつながった

このように、「ターゲットのズレ」を意識することで既存の売上を守りながら新たな市場を開拓できるのです。

「シナジー効果」を狙う

カニバリゼーションの考え方を逆手に取り、競合するメニューやサービスを「セット化」することで、売上アップにつなげる戦略です。

具体例:「和牛ハンバーグ」と「ローストビーフ」を両方楽しめるコンボメニュー

前述の例では、「和牛ハンバーグ」と「黒毛和牛のローストビーフ」が競合してしまい、売上が分散しました。でも、考え方を変えて、どちらも楽しめるセットメニューを作るとどうなるでしょう?

✅ 「どっちにしよう…」と悩んでいた人がセットを選ぶことで客単価がアップ
✅ 「両方を味わえる特別感」で、SNS映えするメニューとして話題になる
✅ 「選ぶストレス」がなくなり、注文しやすくなる

このように、競合する商品同士を「どちらかを選ぶもの」ではなく「両方楽しめるもの」として打ち出すことで、売上アップにつなげることが可能です。

「体験価値」を変えてカニバリを回避

同じ商品でも、提供の仕方を変えることで、異なる客層にアプローチできるのがポイント。これにより、カニバリゼーションを回避しながら売上を伸ばせます。

具体例:「テイクアウト専用の高級パフェ」で特別感を演出

あるカフェでは、人気の「高級パフェ」をテイクアウトメニューに追加。しかし、店内でのパフェの注文数が減り、客単価が下がるというカニバリが発生しました。そこで、次のような戦略を取ることに。

✅ 「テイクアウト専用デザイン」に変更し、店内とは違うビジュアルにする
✅ 「数量限定」や「特別パッケージ」でプレミア感を出す
✅ 「お店では味わえないテイクアウト限定のフレーバー」を用意する

この結果、「店内で楽しむパフェ」と「テイクアウトで楽しむパフェ」が別物として認識され、どちらの売上もアップすることに成功しました。

【まとめ】飲食店がカニバリゼーションを回避するために

ここまでの解説で、カニバリゼーション(自社商品の食い合い)は決して悪いことではなく、戦略的に活用することで売上を伸ばすチャンスになることがわかりました。

最後に、飲食店がカニバリゼーションをうまく回避し、成長につなげるためのポイントを整理します。

カニバリゼーションを恐れず、チャンスと捉える

カニバリゼーションは「売上を奪い合う現象」としてネガティブに捉えられがちですが、実際には市場の変化や新しい需要を掘り起こすきっかけになります。

たとえば…

  • 「新メニュー導入で既存メニューの売上が落ちた」= 既存メニューに飽きていた顧客のニーズを拾えた証拠
  • 「デリバリー導入で店内客が減った」= 店に来られなかった新しい層を取り込めた可能性
  • 「サブブランドを出したら本店の売上が減った」= 価格や雰囲気を理由に本店に来なかった人が利用している

「売上が落ちた」のではなく、「新しい市場が動き始めた」と考え、どう活かすかを考えることが重要です。

「ターゲットのズラし」で売上の分散を防ぐ

カニバリゼーションを回避するために、ターゲット層を明確に分けることが大切です。

  • 価格帯を変える(例:高級ディナー店がランチ限定で低価格メニューを提供)
  • 時間帯を分ける(例:カフェが朝はモーニングセット、昼はスイーツ、夜はバータイムに特化)
  • 用途を変える(例:カジュアルな店舗とフォーマルな店舗で使い分け)

これにより、「顧客の奪い合い」ではなく「顧客の住み分け」ができるようになります。

「シナジー効果」を狙って相乗効果を生む

カニバリゼーションを防ぐだけでなく、競合する商品やサービスを組み合わせて、より魅力的な体験を提供するのも有効です。

  • セット販売で客単価を上げる(例:「ローストビーフとハンバーグのコンボセット」)
  • 異なるサービスを組み合わせる(例:「テイクアウト限定のドリンクとスイーツセット」)
  • 系列店同士で相互送客(例:「カジュアル店で食事 → 高級店でデザート」などの流れを作る)

こうした工夫により、「どっちを選ぶか」ではなく、「両方楽しむ」形に持っていくことができます。

「体験価値の違い」を明確にして競合を防ぐ

同じ商品でも、提供の仕方を変えるだけでターゲットがズレ、カニバリゼーションを回避できます。

  • 店内限定 vs テイクアウト限定(例:「店ではアート系パフェ、テイクアウトはシンプルパフェ」)
  • 季節限定メニューで期間ごとに需要を分ける(例:「夏は冷製パスタ、冬は煮込みハンバーグ」)
  • 違うストーリーを持たせる(例:「レギュラーメニューと、シェフのこだわり限定メニュー」)

このように、「同じメニューでも体験の仕方が違う」と感じさせることで、売上を分散させずに最大化できます。

【結論】カニバリゼーションをうまく活用して飲食店の売上を最大化しよう!

✅ カニバリゼーションはネガティブではなく、ビジネスを成長させるチャンス!
✅ 「ターゲットのズラし」「シナジー効果」「体験価値の違い」を意識することで、売上最大化が可能!
✅ 自社の商品・サービスが競合しないように、計画的な戦略を立てることが重要!

「カニバリゼーションは避けるべきもの」と考えずうまく活用して売上を伸ばしていく視点を持つことで、飲食店の経営はより安定し成長していきます。

おすすめの記事